June19

第十一課 本文II 「お母さん、さようなら」

もう三十年の前に、「こんにちは、赤ちゃん、私はママよ」で始まる歌がはやりました。自分の赤ん坊に呼びかけるという設定が珍しかったこともあるでしょうが、「こんにちは」という挨拶が型破りで、意外性があったからではないと思います。自分の子ども、あるいは自分の家族に「こんにちは」と呼びかけることは、普通しないことです。日本人の家族にホームステイしているアメリカ人の高校生が、その家族の主人に向かって「こんにちは」と挨拶してびっくりされたという話すを良く聞きます。英語のHiやHelloとは違って、日本語の「こんにちは」は家族以外の人に対してのみ使われるのです。
考えて見ると、ほかに「さようなら」も家族には使いません。これは外国人ではなく小学生がラジオの相談番組で話しているのを、偶然乗り合わせたタクシーのなかで聞いたのですが、その少年は、いつもいつも同じ挨拶をするのは能がないと考え、たまには変わった挨拶をしてみようと思い立ちました。そこできょう、朝学校へ行くときに、「行ってまいります」といういつもの挨拶の代わりに、
-お母さん、さようなら。
と言ったそうです。すると台所にお母さんが血相をかえて玄関に飛んできて、「どうしたの、どうしたの」と問い詰めるので、びっくりして、家を飛び出してしまった、という話でした。その時、子どもも外国人も、社会の習慣に慣れていないという点では同じなのだなと思いました。「さようなら」も家族の間では、永遠の別れを想定しない限り使いません。家族かそうでないかで挨拶が違うというのは、おもしろいことです。

第一課 本文I 身振り

第一課 本文II いう

第二課 本文 I 動物園

第十一課 本文II 「お母さん、さようなら」

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